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起業Q&A

会社設立後の税務上の手続きについて教えてください。

会社設立後に税務上必要となる手続きは、税務署、都道府県税事務所及び市区町村役場へ一定の書類を提出することとなります。提出する書類によりそれぞれ提出期限が異なるため注意が必要です。

1.税務署
(1)法人設立届出書
この届出は設立後2ヶ月以内に本店所在地を所轄する税務署へ「法人事業概況説明書」、「設立時会社の登記簿謄本」、「定款の写し」、「設立時の貸借対照表」等と共に提出します。

(2)青色申告の承認申請書
青色申告の特典(欠損金の繰越控除、各種の特別控除等)を受けるために提出します。提出期限は設立後3ヶ月以内か事業年度終了の日のいずれか早い日となります。

(3)給与支払事務所等の開設届出
給与支給に伴う源泉徴収関係の書類として提出します。この届出書は給与等の支払い事実が生じた日から1ヶ月以内となっております。
設立の初月から役員給与や給与手当等の給与が発生する場合には、設立関係書類と併せて提出するとスムーズです。

(4)源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請及び納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出(条件を満たす場合)
給与支給人員の数が常時10名未満の場合にはこの届出書を提出することにより、毎月納付でなく、年2回(7/10と1/20)の納付とすることが出来ます。 
ただし、届出を提出した日の翌月分より適用となりますので、提出した日の属する月分の源泉所得税は翌月10日までに納付となります。
例えば、2月に提出した場合には、2月分は3月10日が納付期限、3月分から6月分は7月10日が納付期限となります。

(5)申告期限の延長の特例の申請 (必要に応じて)
法人税の申告期限は原則として決算日終了の日の翌月から2ヶ月以内となっていますが、この申請を提出することにより、申告期限を1ヶ月延長することができます。

2.都道府県税事務所
(1)法人設立届出書
都道府県税事務所及び各市区町村役場へは設立後2ヶ月以内(都税事務所においては、15日以内)に「法人設立届出書」を「設立時会社の登記簿謄本」と「定款の写し」を添えて提出します。

(2)申告書の提出期限の延長の承認申請書(二) (必要に応じて)
法人事業税の申告期限は原則として決算日終了の日の翌月から2ヶ月以内となっていますが、この申請を提出することにより、申告期限を1ヶ月延長することができます。

(3)法人税に係る確定申告書又は連結確定申告書の提出期限の延長の処分等の届出書 (必要に応じて)
法人都道府県民税の申告期限は原則として決算日終了の日の翌月から2ヶ月以内となっていますが、この申請を提出することにより、申告期限を1ヶ月延長することができます。

3.市区町村役場
(1)法人設立届出書
各市区町村役場へは設立後2ヶ月以内(各市区町村により異なる場合があります)に「法人設立届出書」を「設立時会社の登記簿謄本」と「定款の写し」を添えて提出します。

会社設立後の税務上の手続きで何か注意点はありますか?

各種届出書の中でも特に注意すべき点は以下の通りです。

1.青色申告の承認申請書
提出を失念すると、設立第1期が赤字の場合でも、税務上の欠損金を翌期へ繰り越すことができなくなりますので要注意です。
具体的には、青色申告の承認を受けていると、第2期が黒字の場合には税金計算上において、第1期の欠損金と第2期の課税所得を相殺できます。しかし、青色申告の承認を受けていないと第1期の欠損金は切り捨てとなり、第2期の課税所得にそのまま課税されてしまいます。
提出期限は設立後3ヶ月以内か事業年度終了の日のいずれか早い日となっていますが、設立届出書と同時に提出することをお薦めします。

2.源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請及び納期の特例適用者に係る納期限の特例に関する届出
提出することにより、毎月納付する必要がある源泉所得税を年2回の納付とできるため、事務手続きの簡便性を図れます。
ただし、年2回の納付となることから、1回の納付が6ヶ月分の源泉所得税となりますので、資金繰り上は早めの納税資金確保の必要性があります。
また、この届出の適用対象は、給与及び退職金に係る源泉所得税と弁護士や税理士等に係る報酬源泉所得税に限られます。そのため、デザイン料や原稿料等に係る源泉所得税については、この届出の提出有無に関わらず、支払日の翌月10日が納付期限となるため、注意が必要です。

3.申告期限の延長の特例の申請
この申請は、会社の定款において「決算確定の日」を事業年度終了の日から3月以内という記載がない場合には申請の提出要件を満たさないこととなります。(定款の記載文言は会社によって異なります)
また、延長されるのは申告書の提出期限のみです。そのため、納付期限はあくまで決算日の翌日から2月以内となるため注意が必要です。

資本金の額はいくらにしたらいいですか?

会社を設立するにあたり、株主構成と同様に資本金の額をいくらにするのかについても重要です。
まず、税務の観点から考えますと、消費税の問題が関わってきます。「設立時の税務」で記載しておりますので、詳細は省略しますが、1,000万円という金額が一つの基準となります。
次に、資金繰りの問題です。会社を設立して事業を開始するとなると初期投資が必要となります。事務所を賃借するのであれば、内装費を始め、事務機器の整備、保証金や礼金の支出等があります。飲食店を開くのであれば、内装費や厨房機器といった設備投資がかかります。更に、事業を開始すると売上に関係なく発生する費用(いわゆる固定費)も出てきます。こういった費用を負担できる資金を資本金で賄うのか、もしくは借入による資金調達を行うのかが判断のポイントになります。資本金で賄うのであれば、初期投資費用と半年分の固定費の合計金額は用意された方が無難ではないでしょうか。(業種によって、その額は異なります。)

設立時の資本金と消費税の関係について教えてください。

消費税法において、基準期間のない法人については、資本金が1,000万円以上の場合には、消費税の納税義務者となる特例が設けられています。逆に、資本金の額が1,000万円未満の場合には、原則として2年間は消費税の納税義務者とはなりません。

新規設立法人が消費税について注意すべきことはありますか?

資本金が1,000万円未満の法人については、設立後2年間は原則として納税義務者となりません。しかし、業種にもよりますが設立時には設備投資等により多額の費用が発生する場合があります。例えば、飲食店の新規開店では多額の設備投資が発生することが見込まれます。そのような場合では、実は消費税の納税義務者となることを選択することにより、消費税の還付を受けられるような可能性があります。
消費税の納税義務者ではない法人が納税義務者を選択するためには、納税義務者を選択する届出書の提出が必要です。(この届出書にも提出期限があります。)
このように新規設立法人にとっては、消費税のみに焦点を当てても有利不利が出てきますので注意が必要です。

株主構成はどのようにしたらいいですか?

会社を設立するにあたり、株主を誰にするかというのは大きなポイントです。
一番簡単な選択は、自分一人が株主となることです。起業する方の多くが一人株主なのではないでしょうか。
次に多いパターンが、親族に株主になってもらうということでしょう。その他にも、一緒に起業するパートナーと株式を持ち合うパターンや、知人等の第三者に株主になってもらうパターンもあるかと思います。
ここで一番重要なのは、どのパターンを選択してもメリットデメリットがあるということです。自分一人が株主ですと資本金の額は自分が出せる範囲ということになるでしょう。しかし、親族やビジネスパートナー、知人等に株主になってもらえれば、資本金の額は自分一人で株主になるよりも多い金額となるでしょう。これが大きなメリットです。しかし、出資してもらうということは出資した方に株主としての権利を持って頂くことになります。会社経営にあたり、株主としての権利(いわゆる議決権)を有する方々は、ときに協力者となりますが、ときに反対者となりうる可能性があることも覚悟しないといけません。そうなった場合に、会社経営に支障がない程度に議決権割合を抑えられるかがポイントになります。そういった意味でも、会社を設立するにあたっての株主構成というのは非常に重要となります。

自宅で開業と事務所を賃借するのはどちらがいいですか?

会社を設立するにあたり、自宅で開業するのか、それとも事務所を賃借するのかは重要なポイントといえます。
自宅開業の場合、ネット上で完結するようなビジネスや家族のみで運営するようなビジネスの場合には、初期支出が比較的少額で済むため資金的に余裕が無い起業時には適しています。しかし、来客対応には若干の不便さがあるでしょうし、顧客や人材募集においての信用力という観点からは事務所賃借と比べると若干の見劣りは覚悟しなければなりません。
これに対して事務所の賃借は、顧客獲得や人材募集には信用力という観点から大いにプラスとなるだけでなく、ビジネスに適したレイアウト等により効率的なビジネス環境の構築も可能でしょう。しかし、契約時における保証金や礼金等の多額の支出が必要となりますし、毎月の固定費も発生することから、資金計画を前提とした物件選定が必要です。
自宅開業または事務所賃借のどちらもそれぞれにメリットとデメリットがあるため、資金面だけでなく、これから行う事業内容や事業計画に基づき、将来を見据えたうえで判断することが必要です。

退職後の個人の税金について教えてください。

起業するために退職する場合、退職した後の個人の税金については、法人を設立して行う場合ですと以下のようになります。

1.所得税 
退職前の会社より交付された源泉徴収票を設立した会社へ提出し、その後の役員給与または給与手当と併せて、年末調整でその年の年間所得税額を確定します。
給与所得以外の所得がある人は、別途、確定申告が必要な場合もあります。

2.個人住民税 
個人住民税を特別徴収(給与天引き)されていた場合には、退職した月によっては給与又は退職金から住民税の残存期間に応じた税額を一括徴収されます。
また、住民税は前年の所得に基づいて税額の計算が行われ、その年の6月から翌年5月までを年度をするため、退職した翌年の住民税に係る納税資金対策は十分検討しておく必要があります。

個人事業を営んでいますが、法人成りをして会社を設立した場合にどのような違いがあるのでしょうか?

個人事業から法人成りをして会社を設立した場合には、大きく分けて経営的観点と税務的観点から違いがあるといえます。
まず経営的観点では、個人に比べて法人の方が社会的信用力の向上により、得意先の開拓や事業拡大、金融機関等からの融資が個人と比較して容易になるということが挙げられます。例えば法人向け融資は個人の事業向け融資と比べると種類も豊富です。
また、出資を募ることにより増資という形態での資金調達や私募債の発行という形態での資金調達も可能となります。
人材募集を行う上でも個人より法人の方が求職者に対する信用力が高く、より良い人材を獲得できる可能性があるといえます。
次に税務的観点では、所得(もうけ)に対して課される主な税法が異なります。つまり、個人事業には累進税率を採用する所得税法が適用されますが、法人には原則として一定税率である法人税法が適用されます。そのため、所得金額によっては一定税率を採用する法人税の方が不利な場合があります。逆に一定の所得以上ですと、累進税率の所得税の方が不利な場合もあります。
個々の事情により異なりますが、一般的には収入金額で3,000万円を超えるような場合は、税率だけでなく、法人独自に要する様々な費用負担を考慮しても法人の方が有利であることが多いといわれています。(あくまで目安です)
税務的なメリットでは、法人の場合ですと役員報酬又は給与が適正な額であれば原則として法人の損金算入が認められる上に、支給を受ける役員又は従業員については、所得税法上において給与所得控除が受けられるため、いわゆる二重の恩恵を受けられることとなります。また、欠損が生じた場合には所得税法上は欠損の繰越は3年ですが、法人税法上は7年の繰越控除が可能です。
逆にデメリットとしては、業務に要した接待交際費について、個人の場合には経費算入限度額がありませんが、法人には資本金に応じた一定の損金不算入規定があります。
また、法人の場合には所得が発生せず、欠損となっていても住民税均等割額が課税されることとなります。
法人化した場合にはメリットもありますが、個人に比べてランニングコストの負担が大きくなるのが通常です。個々の事情により経営上あるいは、税務上、大きな差も生じる場合がありますので、慎重な検討が必要です。

会社を設立するにあたり、どのような印鑑が必要でしょうか?

会社を設立するにあたり、必ず必要な印鑑は代表印となります。これは、設立登記の際に印鑑登録をするために必要となりますので、設立登記前に準備する必要があります。印鑑登録された代表印を実印ともいいます。
次に必要なものが銀行印です。これは会社が預金口座を開設する際に必要となります。銀行印を作成せず、代表印を銀行印と共用することも可能ではありますが、可能であれば代表印と銀行印は分けた方がいいでしょう。
その他には、代表印(実印)と区別する意味で認印を作成する場合もあります。実印・を押すことには抵抗がある、または印影の悪用等のリスクヘッジの観点等が認印を作成する目的としてあるようです。
また、印鑑ではありませんがゴム印も必要でしょう。会社を設立すると各種の手続に際して書類を書くことになりますが、いちいち会社名や住所を手書きすると大変です。そこで、会社名、会社住所、代表者名等のゴム印を作成しておくと事務手続の手間が軽減されます。

自社HPの作成はした方がいいのでしょうか?

インターネットが普及した昨今では、自社のHPを作成している会社が大多数を占めていますが、設立して間もない会社ですとHPの作成までは時間的、資金的等の理由により作成できていない会社もあるかと思います。
しかし、HPは自社PRや自社商品又はサービス等を知ってもらうための広告宣伝効果として大きな魅力を持っています。SEO対策等により広く不特定多数の人々に知ってもらうと更に効果は上がりますが、そうではないにしても、名刺交換等をした方々や営業先の会社が自社に興味を持って頂いた際に、HPが有ると無いでは大きな差になります。
また、自社HPにおいて忘れてはならないのが人事面における効用です。例えばどういった会社なのか、どういったポリシーを持っているのかといった、会社の内面を知ってもらうために役立ちます。新聞や雑誌等の募集広告における限られた紙面による情報を補うことができ、会社の価値観に共感し、共有できるような人材の確保に繋がります。
このように、HPは会社の情報発信基地として非常に有用ですので、自社HPは作成された方がいいかと思います。